矯正歯科治療のトラブル 

初診時、診断時、治療中の詳しい説明があればトラブルを回避できます。近年、医科や歯科の分野で、インフォームド・コンセントの必要性が強く認識されています。背景としては、カルテ開示を例にするまでもなく、患者さんたちが自分に関する医療の情報を知る権利があると考えるようになり、治療に際しても、その意向が尊重される時代になってきたことが挙げられるでしょう。 また最近、歯を抜かずに矯正治療をしたいと希望する患者さんが増えたこともあって、矯正歯科医側にも、治療を始める前に、きちんとしておくことが、将来のクレームやトラブルを避けるために重要だという考えが強まっています。インフォームド・コンセントは、治療のそれぞれの段階で必要ですが、患者さんの側からすれば、とりわけ診断時に、矯正歯科医から治療方針や治療内容などの説明を十分に聞いて、確認しておく必要があります。

担当医は、患者さんにとって何が気になるのか、どこを治したいのかといった治療動機をよく理解した上で精密検査を行い、資料を分析し、最適と思われる治療方針を立て、それに用いる装置、治療期間、費用、またメリットやデメリットを明確に説明する責任を持っています。患者さん自身にも治療方法を選択できる環境を提供することが、現代の矯正歯科医には重要なのです。インフォームド・コンセントというと、事務的、あるいは矯正歯科医の自己防衛的な響きを感じるという患者さんもいるでしょう。

そうではありません。その根底には、治療を受ける患者さんが、治療の内容をよく理解し、矯正歯科医との信頼関係を樹立し、安心して治療を受けるためという大事な意味があるのです。ただし、時間がたつうちに、患者さんはじぶんの都合の良い点だけを記憶し、他は忘れてしまうということが、ないわけではありません。

早期治療と本格治療の間に数年の間があくことがあります。そういう時、診断時に本格治療の必要性を担当医が説明していたとしても、記憶に残っていないこともあり得ます。一つには患者さん側も、矯正歯科治療についてある程度の知識を貯えたうえで、矯正歯科医の説明を理解し判断するという姿勢が必要ではないでしょうか。