歯の寿命と喪失の現実

●歯はどれくらい長持ちするのか

虫歯や歯ぐきの病気にならなければ、 歯はどれくらい長持ちするのでしょうか。歯を支える歯ぐきの骨は、 健康な人の場合、 加歳から 一年に 0 0六ミリずつさがってしまい ます。厚生省の調査に よると、下あごの第 一大臼歯は、 女性の平均で43歳、男性平均で47歳で失われるのです向。 日本人の女性(平均)50歳までに下あごの奥歯を四本失い、30年近くは入れ歯のご厄介に なるのです。 男性にくらべて女性の歯の平均 寿命が短いのも特徴です。命の 方は女性が長いのですから、女性 はずい分長く、入れ歯生活を送っているのです。

●歯科医と患者が ダメにしている歯の一生

歯科医学の専門書にも「歯の一生」というと、歯を治療して、最後に歯が抜けてしまう絵が描かれています。治療をして、それがダメになって、入れ歯になるというストーリーです。でもこれは別な言い方をすれば、患者さんと歯科医がダメにしている歯の一生なの です。 一生自分の歯で食べられるように、患者さん一人ひとりの歯の病気のかかりやすさを診断し、その人に応じた管理を行えば、こんな ことにはなるはずはないのです。 歯科医院は、歯が痛くなったら 駆け込むところでしょうか。入れ歯を入れてもらうためにかかるところでしょうか。年をとってもきれいな歯をした人が、健康を守る ために通うのが、歯科医の上手な かかり方です。ほんとうの歯の 一生は、大人の歯が生えると、 削ったり詰めたりすることなく、年をとってちょっとチビで、歯ぐきがちょっとさがって、そのまま働きつづけて 一生を終えるのです。 人間の寿命が長くなったのに、それに応じた健康管理がうまくできていないので、年をとると歯がなくなるのです。それだけならいいのですが、よくない虫歯治療がかえって虫歯をひどくしたり、歯周病をつくってしまったりして、 自然のままでは見られないスピードで歯がダメになっています。 わたしたちの生活ぶりは、人生 60年の頃と変わっていません。寿命がのびた分だけ、 不自由な生活 がのびたのです。

●治療で悪くなる人が多い

厚生省の調査では平均十二本の歯を失っています。これはよほどの不摂生か、でなければ医療ミスが繰り返された結果です。残念なことですが、多くの歯科医は、何十年という患者さんの 将来の健康を考えた治療をしていません 虫歯を削 って詰める治療は、適 切な時期に慎重にしなければ、かえって 一段と虫歯を大きくしてし まうのです。 いったん削ってしま えば、歯は悪くなる 一方です。大きくなってしまった虫歯を削ってかぶせる治療は、歯のなかにある 神経(実際には歯が生きるために 大切な血管の集まり)を殺してし まったり、歯ぐきやかみ合わせに とても悪い影響を与えます。 歯科医は、毎日このような患者 さんばかり見ています。自然に悪くなった患者さんより、むしろ治療によって悪くなった患者さんの 方が、ずっと多いのが現実です。

削ってかぶせる、抜いて人工の歯を補うという治療をすればするほど、歯は悪くなります。 こうして 50 代後半から 30 年近くの入れ歯生活を送ることになるのです。

悪いところを治療するためでなく、健康を守るために通う のが、歯科医の上手なかかり方です。

大人の歯は自然には抜けませ ん。普通は歯科医院で抜かれます。もう手遅れになった歯は、 抜くしか手がないのです。でも、 若い頃から通っていたのに、そうなる前になにも手を打ってくれない歯科医だったら、チヨット考えものです。 悪くなったらかぶせる。もっ と悪くなったら抜いて入れ歯を入れる。歯科医は腕に自信があると、ウツカリ、「削って治そう、 抜いて治そう」と考えてしまい ます。保険医療制度も削 ったり 抜いたりした方が、歯科医の収 入が増える仕組みになっていま す。 前の歯がずらっとなくなった 患者さん、片側だけすっかり歯 のない患者さん、下のあごが総 入れ歯になってしまう患者さん がい ます。自然な病気の進行だ けでは、考えられない歯のなく なり方です。後のことを考えず に悪くなった歯を抜いてしまうと、具合のいい入れ歯をつくることもむずかしくなってしまいます。